makonythm

まだまだ止まらないBEAT。mako2のリズム。

小さな親切で失敗デス

 僕が座っているバスの中は、それなりに混んできました。

前を見ると、杖をついたお婆さんがヨロヨロと乗ってきました。

どう見たって80代…いや、90歳を超えているかもしれないヨボヨボでした。

 僕が、席を譲ろうと立ち上がってお婆さんに声をかけたその時、お婆さんの後ろから乗ってきたちょっとコワモテのサラリーマンが、優先席に座っている30代くらいのお姉ちゃんをニラみ「おい、お婆さんに席を譲れよ」と言いました。

 お姉ちゃんは聞き取れなかったようで「は?」と聞き返しましたが、そのやりとりに気が付かなかった当のお婆さんは(いや、気が付いていたかもしれないデス)、とにかく僕が立ち上がって空けた席に、礼を言うことも無く座りました。

 サラリーマンは、とりあえずお婆さんが座れた事を確認すると、照れ隠しのように「席ぐらい譲ってやれよ、まったく」などとブツブツと呟き、その場を離れました。しかし、状況を飲み込めていないお姉ちゃんは、よりによって隣に座っているオバちゃんに「あの人、私に何を言ってたんですか」と憎憎しい顔で訊ねました。

 もちろん、オバさんは「あの人はアナタに“お婆さんに席を譲れ”って言ってたのよ!」と、その年代の女性特有の大きな声で「アンタ気が利かないわねぇ」といった風に答えマス。

 車内がなんか気まずい雰囲気なので、僕は携帯電話を凝視して、メールを打つフリをしました。サラリーマンは遠目にお姉ちゃんをニラみ、お姉ちゃんはソレを無視。もちろん、お婆ちゃんは知らん顔デス。

 

 嗚呼、僕さえ立ち上がらなければ、サラリーマンは「お婆さんの為に席を空けさせた、顔は怖いけど優しい人」になれたし、お姉ちゃんは「気が付かなかったものでスミマセン、お婆さんどうぞ。と席を譲った優しい人」になれたし、オバちゃんや車内の人もソレを見て「今日見た心温まる話」にこのエピソードを加えられたかもしれないのに…。

 

 嗚呼、僕が立ち上がってしまったせいで、サラリーマンは「優先席に座る姉ちゃんにイチャモンをつけた人」になっちゃったし、お姉ちゃんは「お婆さんがいるのに優先席に座り続けた図々しい人」になっちゃったし、ついでにオバちゃんは「知らない人に大声で嫌味を言うオバちゃん」に、乗り合わせた人までも「何があっても他人事で見て見ぬふりをする偽善者」になってしまいました。見た人がいれば、お婆さんさえも「礼ひとつ言えないババア」だったでしょう。

 

 僕の「小さな親切のつもり」から始まった「連鎖」で、その場に居たみんなが悪者になっちゃったよ…と反省している最中、例のサラリーマンが逃げるようにバスを降りていきました。悪い事、してないのに。なんか、ゴメンね。